中国特許出願の重要性
以前は、中国への出願は模倣対策の意味合いが濃いものでしたが、中国は国策により急激に知財大国へと変貌を遂げつつあり、それに伴って日本企業の中国における知財戦略も変化してきています。近年は、中国を生産拠点としてのみならず開発拠点として重要視する日本企業も増えています。
中国における特許、実用新案及び意匠の合計出願件数は、中国国内の出願人によるものだけでも2010年において約120万件(特許出願は約40万件)であり、中国政府は、2015年には約200万件にまで増加させる計画を明らかにしています。
また、中国国内における特許出願件数も近年、増加の一途であり、2011年の中国での特許出願件数は、前年比の何と34.5%増の約526,000件となり、503,000件の米国を抜いて初めて世界1位となりました。
日本から中国への特許出願件数も顕著に増加し、2010年には前年比10%増の約34,000件となりました。参考までに、2010年の日本から米国への出願件数は約84,000件、欧州への特許出願件数は約42,000件でした。
更に注目すべきは、中国国内の出願人による出願が占める割合は、かなり高いことです。例えば、2010年における中国特許出願の約75%、実用新案出願の約99%、意匠出願の約97%が中国国内の出願人によるものです。
上で、2010年における中国国内の出願人による出願が約120万件であったことを述べましたが、その内訳は、特許、実用新案、意匠が、それぞれ約400,000件ずつです。一方、日本においては、2010年の出願件数は、特許が344,598件、実用新案が8,679件、意匠が31,756件でした。このことから分かるように、中国は、特許のみならず、実用新案、意匠も含む知的財産権全般に非常に注力しています。
要するに、毎年、中国国内の出願人により膨大な件数の特許、実案、意匠出願が提出されており、日本企業は、中国で知的財産権を持っていないと、中国での事業に重大な支障を来たすようになってきています。
既に、中国での事業展開をお考えの企業の方からは、中国では特許を持っていないと相手にされないというような話を屡々伺います。
中国が、今後も自国の知的財産の保護の強化に向かうことは想像に難くなく、実際に、知財権訴訟件数も増え続け、現在では日本の100倍近くに達する件数となっています。最近では、広東省のIT企業「唯冠科技」が、米アップルのタブレット型多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」の中国での商標権を主張して、アップル側を相手取って訴訟を起こし、最終的にはアップルが6000万ドル(約48億円)を唯冠に支払うことで和解した事件が大いに話題になりました。
中国における特許係争の事件数は、2008年の約4,000年から2010年には約6,000件に増加しています。