その他(商標)

Q1. 日本の商標登録出願に基づく優先権主張をして外国に商標登録出願する場合、特許の場合と同様に、日本出願から1年以内に外国出願すれば良いのか?

A1. パリ条約に基づく優先期間は、特許については1年ですが、商標については6ヶ月と定められています。従って、日本の商標登録出願の日から6ヶ月以内に外国出願手続きを完了させなければ優先権を享受することはできません。

Q2. 直接外国へ商標登録出願することに対する国際商標出願(マドリッドプロトコル出願)のメリットとデメリットは

A2. マドリッドプロトコル出願(所謂「マドプロ出願」)のメリットとデメリットは以下の通りです。

メリット

マドプロ出願のメリットとしては、現地代理人を介さずに出願から登録手続までを完結できますので、基本的には現地代理人費用が発生しません

但し、いずれかの指定国において拒絶理由が見つかった場合には、その指定国の代理人が応答手続を行わなければならないことになっているため、その時点からの現地代理人費用が発生します。

また、もしも登録する国や商標を使用する対象を増やす可能性があるならば、マドプロ出願には、事後指定(指定国、指定商品・役務の追加)が可能です。但し、指定商品・役務の追加は、国際登録の範囲内でのみ可能です。従って、後に商標を活用する国や対象が増えた場合に対応できるというメリットがあります。

さらに、登録後も更新、各種変更手続きを一括で行うことができます。

デメリット

マドプロ出願の場合、先ず、日本に出願する必要があります。従って、日本での商標権が不要という場合は、日本での出願費用が無駄になってしまいます。

また、国際登録の日から5年以内に基礎出願が拒絶、取下げ、若しくは放棄となった場合や基礎登録が取消された場合、マドプロ出願・登録も取消されてしまうという不利があります(所謂「セントラルアタック」)。(「セントラルアタック」は、「国際登録の従属性」とも称します。)この場合、各国出願への切り替えを行うことができますが、新たに出願費用がかかります。

Q3. マドリッドプロトコルの加盟国は

A3. 現在のところ、日本、米国、EU、ロシア、中国、韓国などを含む106カ国が加盟しています。近年、注目を集めている新興国では、ベトナム、タイ、インド、インドネシア、フィリピン、マレーシア、メキシコ、イラン、エジプトなどは加盟していますが、台湾、香港、マカオ、ミャンマー、バングラデシュなどの国は未加盟です(2019年10月現在)。詳しくは、こちらで確認できます。

Q4. マドリッドプロトコルにおける各種手続書類は、WIPO国際事務局又は日本国特許庁のいずれに提出するのか?

A4. 書類の提出先は以下の通りです。

国際登録出願(MM2): 日本国特許庁
事後指定(MM4): WIPO国際事務局又は日本国特許庁
名義変更(MM5): WIPO国際事務局又は日本国特許庁
更新(MM11): WIPO国際事務局又は日本国特許庁

MM4(事後指定)、MM5(名義変更)、MM11(更新)については、日本国特許庁に提出する場合は、国際手数料とは別に、送付手数料として特許印紙4,200円がかかります。なお、日本国特許庁に対し、オンラインで手続はできません。また予納口座及び申請人識別番号は利用できません。

WIPO国際事務局への提出方法は、郵送、FAX、電子メールのいずれかによります。WIPO国際事務局における宛先の詳細については日本国特許庁ウェブサイトの「マドリッド協定議定書に関するWIPOの問い合わせ先」を参照ください。

Q5. マドリッドプロトコルの指定国のうちで、米国については特別の手続き等が必要であると聞いたが、どのようなものか?

A5. 米国の指定時には、標章を使用する意思の宣言書(MM18)の提出が必要です。また、米国において権利を維持するためには、「使用継続の宣誓供述書(an affidavit or declaration of use in commerce)」を米国特許庁に直接提出する必要があります。使用継続の宣誓供述書(第1回目)は、米国特許商標庁による保護拡張の証明書発行の日(米国における登録の日)から起算して5年から6年の間に、その使用(あるいは正当な不使用)の裏付けるとなる証拠とともに、米国特許庁に対して提出することが必要です。米国における登録の日から起算して6年を過ぎた場合、さらに6ヶ月の猶予期間があり、追加手数料を支払うことで、この猶予期間内に宣誓供述書を提出することができます。さらなる宣誓供述書は、米国における登録の日から起算して9年~10年の間、又はその日から6ヶ月の猶予期間内に追加手数料を支払って提出することが必要です。また、それに続く宣誓供述書は、その後10年ごとに提出することが必要です。さらに詳しい情報は、日本国特許庁ウェブサイトの「米国を指定した国際登録に係る使用継続の宣誓供述書の提出について(参考訳)」を参照できます。

米国のほか、フィリピン及びカンボジアについても、定期的に証拠等とともに「使用に関する宣誓書(declarations of actual use of the mark)」を現地特許庁に直接提出する必要があります。詳細については、WIPO Information Notice(MADRID/2013/18及びMADRID/2016/11)を参照できます。

Q6. 展示会に自社製品を出品するにあたり、新たな商標を使用しようと考えているが、特許出願の場合のように、展示の後に、新たな商標について新規性を喪失せずに出願することはできるのか?

A6. まず、商標に関しては、特許におけるような所謂「新規性」という概念は存在しません。特許、実用新案、意匠等は、新たな技術などを発明、考案又は創作し、その新しい技術などの保護を目的とするものですが、商標権は「選択物」であると言われます。これは、商標権に関しては、既存の言葉などを選択して特定の商品やサービスを特定するために用いる権利であるという考え方に基づきます。

しかし、商標登録出願にも、特許制度などにおける「新規性の喪失の例外」(特許法第30条)の規定に類似の規定は存在します。商標法の第9条(出願時の特例)においては、特定の博覧会において出品・出展した商品やサービスについて使用をした商標について、その出品・出展の日から6ヶ月以内にその商標について出願した場合は、その出品・出展の日が商標登録出願の出願日とみなされます。この際、商標自体並びに商標登録出願の指定商品又は役務は、出品・出展したものと同一にする必要があります。

特許等の場合、新規性の喪失の例外の適用を受ける場合、出願前に公開した技術と出願に係る発明は必ずしも同一である必要はありませんが、商標に関する上記「出願時の特例」については、上記の通り、商標及び指定商品・役務は、出品・出展の時のものと同一であることが要求されます。また、特許などの場合、特許出願の出願日は、出願前の公開の日に遡及することは有りませんが、商標の上記「出願時の特例」においては、出願日は出品・出展した日に遡及します。

また、商標登録出願について「出願時の特例」を受けるためには、その旨を記載した書面を商標登録出願と同時に特許庁に提出し、且つ当該商標登録出願における商標及び指定商品・役務は、出品・出展の時のものと同一であることを証明する書面を商標登録出願の日から30日以内に提出しなければなりません。

尚、商標法第9条(出願時の特例)において定める特定の博覧会は以下のようなものです。

 ①日本政府等が開設する博覧会、
 ②日本政府等以外の者が開設する博覧会であつて特許庁長官の定める基準に適合するもの、
 ③パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国の領域内でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会、
 ④パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国のいずれにも該当しない国の領域内でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会であつて特許庁長官の定める基準に適合するもの。


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